心・マインド (mind)

【ナチュロパスに聞く】ストレスの原因と、誰でも簡単にできる5つのストレス解消法

私たちが生きていく中で、仕事や勉強、人間関係やお金など、ストレスを感じる場面は至るところにあります。さらに近頃では外に出られる機会も減って、どうしてもストレスが溜まってしまいがち。そしてストレスが溜まると今度は体の様々な部分に不調が出てきてしまいます。

そんな時、簡単にできるストレス解消法があったらとっても便利ですよね。今回は、オーストラリアとニュージーランドで四年間勉強してナチュロパシー(自然療法学)と薬草学の学士号を取得し、現在はオークランドにあるナチュロパシッククリニックで管理・運営に携わる私が、ストレスの原因と、簡単にできる5つのストレス解消法をお教えします!

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ストレスって、どこからくるの?

ストレスには様々なタイプのものが存在します。大きく分けて、肉体的、心理的、心理社会的、精神的なものの4つにわかれます。どのタイプのストレスでも、溜めすぎると体に悪影響を及ぼすことはよく知られています。では、一体ストレスの原因って何なのでしょうか?

ここで様々なストレスの原因を挙げてみます。

肉体的ストレス
病気(ウイルス、バクテリア、真菌)、けが、手術、過度な労働・運動、殺虫剤、除草剤、重金属、不十分な日光、放射線物質、騒音、酸素不足、栄養不足、食べ物アレルギー、偏食、水分不足、薬物乱用、骨・筋肉のズレ、など
心理的ストレス
恨み、悲しみ、怒り、恐れ、喪失感、不満、心配、情報過多、罪悪感、嫉妬、抵抗、執着、自己否定、恥、完璧主義、自分が自分でないような感覚、自分にコントロールできない感覚、パニック症候群、宗教的信仰心、役割、態度、世界観、など
心理社会的ストレス
難しい人付き合い(家族、恋人、友人、上司、同僚など)、社会的サポートの不足、生き抜く為に必要な資源の不足、失業、自己破産、孤立、親しい人を亡くす、など
精神的ストレス
価値観・意味・目的の崩壊、喜びのない努力、満足しない、非生産的な、無意味な仕事、人の核にある信念の崩壊

これらのストレスが、人によってはいくつも、そして複雑に絡み合って、様々な悪影響を体に及ぼすのです。次はストレスが溜まるとどうなるのか見ていきましょう。

実は怖い!ストレスが溜まると体に起こる変化

「ストレス」は全体の95%近くもしくはそれ以上の病気に関連があるとされています。ストレスからくる気持ち、気分、感情などが体内に蓄積すると、頭痛、高血圧、心拍数の上昇、痛み(肉体的・心理的ともに)、呼吸が浅くなる、疲労、吐き気、心配、アレルギー、喘息、自己免疫疾患、胃腸系の不調(下痢、胃痛、ポリープ(腫瘍など)、胃食道逆流症、皮膚疾患、など、様々な病気の引き金になります。

ストレスが長期化してくると、免疫力が下がって風邪や様々な感染症にかかりやすくなったり、癌を発症したり、ホルモンバランスを崩してさらに自己免疫力に影響します。

その他にも、集中力・記憶力の低下、緊張感、イライラ、リラックスできない、鬱、不眠、強張り、泣く、食事・飲酒・喫煙習慣の変化、偏頭痛、汗、歯ぎしり、失神、嘔吐、胃炎、下痢・便秘、頻尿、抜け毛、震え、体重の減少・増加、など挙げだすとキリがないのですが、軽度のものから命に係わる重度のものまで、病気はほぼすべてと言っていいほど、ストレスが引き金となって起こるのです。

ストレスを侮ると後々大変なことに。具合がひどくなる前に、毎日のストレスをその都度解消していくことがとても大切になってきます。では、誰にでもできる、とっても簡単なストレス解消法を5つご紹介していきます。

誰でもできる!毎日やりたい!簡単な5つのストレス解消法

病気を未然に防ぐために、もしくはもうすでに何かに苦しんでいるなら、あなたが抱えるストレスを減らしていくことが重要です。ストレス源をスパッと断ち切れるなら話は早いのですが、現実は難しいもの。ここに紹介する5つの方法を実践して、昨日の自分よりも少しだけ、楽になりましょう。

深呼吸をする

呼吸は普段無意識にしている方も多いかもしれませんが、実は意識してすることで、体内の色々なメカニズムをコントロールできます。

人間のからだは何十兆個もの細胞からできています。その細胞の一つ一つが酸素を取り込み、エネルギーを作り出して体を動かしています。心臓が動くのも、目が見えるのも、耳が聞こえるのも、すべてこの細胞のおかげです。ということは、人間の体には酸素が必要不可欠ということ。深く呼吸をすることで、体内により多くの酸素を取り込み、細胞が正常に働く手助けをすることができます。

もう一つは、自律神経との関連です。交感神経は緊張感・興奮を支配し、副交感神経は回復・リラックスを支配しています。お腹の底から深い呼吸をする行為は副交感神経を優位にさせます。副交感神経が優位になると、早かった心拍数が低下したり、血管が拡張して高かった血圧が下がり、また血管が広がることでその分血液を多く運ぶことができ、酸素をさらに多く運ぶことにつながります。加えて、胃腸がリラックスして食べ物の消化がしやすくなり、過敏だった神経が落ち着いてよく眠れるようになります。副交感神経の一部である迷走神経(vagus nerve)は、声帯とつながっており、のどの奥の筋肉と関連しています。ハミングをしたり、歌を歌ったり、読経・詠唱や、うがいをすることはそれらの筋肉を使い迷走神経を活性化させ、ひいては副交感神経を優位にさせることにつながります。よく、瞑想したりヨガの終わりなどに、「オーーーーーームーーーーーー(Om)」と長い息を吐きながら言っているのを聞いたことがありませんか?あれはまさにこの声帯を動かして副交感神経を優位にさせているのですね。

では実際に、リラックスできる呼吸法を説明していきます。いくつか方法はあるのですが、ここでは4-7-8呼吸法をご紹介します。まず、背筋を伸ばして座ります。椅子に腰かけても、床に直接でもかまいません。そして片手を胸に、もう片方の手をお腹にあて、目を閉じます。4つ数えながら鼻から息を吸い、そのまま止めて7つ数え、8つ数えながら口から息をすべて吐きだします。その時に「はぁぁーーー」と音を出すとより効果的です。これで1サイクル。これを3回繰り返しましょう。ストレスを感じている時、これからストレスを感じる状況が待っているとわかっている時など、リラックスしたい状況でどこでもできます。会社に入る前の車の中で、長い一日が終わって食事の前に。たとえ目を開けたままでも、少し長めの呼吸をするだけでも違います。私も少し前に仕事でストレスが溜まっていた時に深呼吸をしたら、自分が今までどれだけ浅い呼吸をしていたのか気づいたことがあり、お腹の辺りの緊張が和らいだことに感動したのを覚えています。

しっかり睡眠をとる

睡眠がもたらす効果は様々ですが、代表的なものとしては疲労回復です。筋肉などの修復・回復はもちろんですが、脳が休まることで、自律神経の働きも整うため、ストレスの軽減・回復、また耐性も高まります。また、内分泌系が整いホルモンバランスが整うことで、抑うつ状態になるリスクを軽減します。

現代社会に生きる人々の睡眠不足は深刻です。特に、日本人は日付が変わってから眠りにつく方も多いのではないでしょうか。以下のグラフからは、日本人の平均睡眠時間が諸外国に比べていかに少ないかがわかります。

参考:日本人の平均睡眠時間は「世界最短」 ショートスリーパーの割合も最多に

睡眠不足になると、肥満、心臓病・心臓発作、糖尿病、鬱、高血圧などに繋がるとされています。また、免疫機能も低下し、風邪や感染症などにかかりやすくなります。成人に必要な睡眠時間は約6-8時間と言われています。十分な睡眠はストレスを和らげるだけでなく、肥満防止や肌質の向上、記憶の定着など、他にも嬉しい恩恵がたくさん。私の場合、睡眠時間が8時間を切ると翌日頭痛がしてきたり、明らかに機嫌が悪くなったりするので、人によって必要な睡眠時間は様々ですが、あなたがもしストレスを感じているなら、少し長めの睡眠時間を確保するように努力しましょう。

湯船につかる

2021年にLION株式会社が行ったインターネットによる調査では、お風呂が大好きと言われている日本人でも、約4割近い人が毎日は浴槽につからないことがわかりました。最近ではシャワーだけで済ませる方も多いようです。

日本人と外国人の浴槽につかる入浴の頻度

入浴は、副交感神経が優位になって心身の疲れを癒し、老廃物を排出するとともに心身を穏やかにしてリラックス効果大38-40度のお湯は一番副交感神経が活発になるそう。体の芯から温まり、心身の疲労回復には20分程度の入浴がベスト。また、37-38度のちょっとぬるめのお湯は気分を落ち着かせ、脈拍・血圧を下げるそうです。ラベンダーやカモミール、イランイランやネロリなどの精油を数滴垂らしてアロマ香りでリラックスするのも効果的です。お風呂に入った後、一時間ぐらいすると徐々に体温も下がり、眠りにつきやすくなります。逆に、42度以上の熱めのお湯では交感神経が優位に働いてしまうため、ストレス解消というよりは、眠気覚ましや活力を得たい時の方が向いているでしょう。

瞑想をする

「瞑想」というと、ひと昔まえまではインドのお坊さんが無心になって悟りを開くようなイメージがあったかもしれませんが、今では大企業のトップから世界的なアスリートまで、健康の向上やメンタルをコントロールできるスキルのひとつとして大きな注目を集めています。

瞑想=マインドフルネスとは、今、ここに意識を向け、ジャッジせずにありのままに受け入れている状態です。ポジティブもネガティブもなく、善も悪もない。「現在」に意識を向けることで、今この時に感じる必要のないストレスに心を惑わされることなく、物事を客観的・俯瞰的に見る能力、状況に応じた冷静な判断ができる能力を養うことができます。瞑想を続けることで、ストレスの軽減、記憶力・集中力の向上、免疫力の向上、鬱の症状改善、不安・恐怖症の改善、依存症の改善など、さまざまな効果が期待できるという研究結果が出ています。

Mind Full, or Mindful?

瞑想にも様々な方法があり、一概に「これが一番」というのは無いのですが、様々なやり方を試して自分に合ったものを見つけましょう。私の場合、初めの頃は何が自分に合っているのかわからなかったので、とにかく手当たり次第試していました。ガイドの人が誘導してくれるタイプだったり、呼吸に合わせて数を数えたり、波や川の音だけだったり。最終的に、音も何もない、時間が経つとベルが鳴るタイプのものが一番やりやすいと気づきましたが、今でも上に挙げた別のタイプの瞑想をすることもあります。近所をただ散歩しているだけで、瞑想していることもあります。

「そんな時間は取れない」「頭の中がいろんなことでいっぱい」という方でも、1分間の瞑想から初めてみましょう。必ずしも無心になることが瞑想の目的ではありません。息を吸う、吐くということに集中し、頭の中に何か考えが浮かんできたら、(あ、今何か考えてる)ということに気づき、そこからまた息を吸う、息を吐く、ということに意識を戻していく。これを繰り返すことで、意識をコントロールするのが楽にできるようになるはずです。別のことを考えてしまっても大丈夫。「自分ってなんてダメなんだ!」なんて責めたりせずに、また呼吸に意識を戻せばいいだけです。朝起きてすぐや、夜寝る前などが実践しやすいかもしれません。2か月ほど続けると、その効果が実感できるでしょう。

ハーブティーを飲む

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ハーブティーは、中国やインド、エジプトなどの世界各地で何千年も前から病気やけがを癒すものとして使われてきました。豊富な種類のあるハーブティーですが、上手に取り入れると様々な嬉しい効果が期待できます。

気分を和らげたり、リラックス効果の期待できるハーブはたくさんありますが、レモンバーム、ラベンダー、カモミール、ホーリーバジル、パッションフラワー、ペパーミントなどがおすすめです。いくつかのハーブを組み合わせてオリジナルのブレンドティーを作るのも楽しいですね。

ティーカップ一杯分に対して、大さじ一杯ほどのハーブを使います。沸騰させて一呼吸おいたお湯を注ぎ、花や葉は3分ほど、実や種は5分ほど蒸らします。もっと長い時間抽出させておく淹れ方もあります。香りや色を楽しみながら、ほっと一息できる時間を作りましょう。水筒などに入れて職場やお出かけする時に持っていくのもおススメです。

ここで注意していただきたいのは、「ハーブ」と聞くと、ナチュラルで体にいいというイメージがあるかと思いますが、服用している薬や持病等によっては逆効果になる場合もあります。鬱によいとされるセントジョーンズワートは、かなり多くの薬と相互作用があり、併用すると服用薬の効果を弱めたり、逆に強めたりしてしまうことがありますので、お医者さんやメディカルハーバリストなどの専門家に相談することをお勧めします。

まとめ

いかがでしたか?ほっておくと意外と怖いストレス。ご紹介した簡単にできる解消法で、自律神経を整えながら日頃のストレスを減らし、昨日よりも少しだけ、楽になりましょう。

Photo by S Migaj on Unsplash

Reference:

  1. “Types of Stress and Their Symptoms”. https://www.mentalhelp.net/blogs/types-of-stress-and-their-symptoms
  2. “How to tell if stress is affecting your sleep”. https://www.medicalnewstoday.com/articles/322994#stress-and-sleep
  3. Institute of Medicine (US) Committee on Sleep Medicine and Research; Colten HR, Altevogt BM, editors. Sleep Disorders and Sleep Deprivation: An Unmet Public Health Problem. Washington (DC): National Academies Press (US); 2006. 3, Extent and Health Consequences of Chronic Sleep Loss and Sleep Disorders. Available from: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK19961/
  4. “入浴 – ストレス解消法 – “. https://www.japa.org/tips/kkj_1004/
  5. Keng, S. L., Smoski, M. J., & Robins, C. J. (2011). Effects of mindfulness on psychological health: a review of empirical studies. Clinical psychology review31(6), 1041–1056. https://doi.org/10.1016/j.cpr.2011.04.006

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