免疫 (immune system)

【簡単解説!】 ビタミンⅮ が免疫力をアップさせるメカニズム

「太陽のビタミン」とも呼ばれる ビタミンⅮ 。カルシウムの吸収を助けるなどの効果がありますが、免疫機能にも大きな役割を果たしています。

日焼けを嫌うアジア人、特に女性に多い ビタミンⅮ 不足は、風邪やインフルエンザにかかりやすくなったり、傷の治りが遅くなったり、さらには自己免疫疾患や神経系の病気、妊娠合併症やがんにかかりやすくなる可能性が高くなります。

でも、ビタミンⅮ がどうして免疫機能を上げるのか仕組みが知りたい!と思ったあなた。今回はそのメカニズムについて簡単に説明します。

ビタミンⅮ についてはこちらの記事でも説明しています。

オーストラリアとニュージーランドの大学で自然療法・薬草学を学び学士号(Bachelor Degree in Naturopathic and Herbal Medicine)を取得。現在はオークランドにあるナチュロパスクリニックで運営・管理に携わるとともに、クリニックに在籍しているナチュロパス達の疑問に答え日々研究文献・サプリメント等のリサーチをしています。2021年時点でナチュロパス歴5年。

ビタミンⅮ が免疫機能にもたらす効果

マクロファージの活性化

マクロファージとは、白血球の一種で、体内に侵入したウイルスや細菌・病原菌などを食べて消化し、死滅させる働きがあり、私たちを病気や感染症から守ってくれる頼もしい免疫細胞のひとつです。ビタミンⅮ はこのマクロファージを活性化させるため、病気や感染症にかかりにくなります。

昔、結核患者が隔離病院の庭で、ベッドに寝ていたシーンを見たことがあるでしょうか。当時、紫外線に弱いとされていた結核菌を太陽光で殺菌するための治療法でした。現在では治療薬が開発されていますが、昭和20年代までは不治の病とされ、患者の自己免疫力に頼るところが大きかったようです。

1950年代、ウェールズにあった子供用サナトリウムの様子。Photo: BBC より

太陽を浴びることによって体内で ビタミンⅮ が生成され、結果的に免疫機能を上げて結核菌と闘ってくれていたのでしょう。

サイトカインストームを抑える

少し難しい話になってしまいますが、サイトカインとは、細胞同士の情報を伝達するたんぱく質で、免疫細胞を活性化させて細菌やウイルスなどの外敵に攻撃の命令を出したり、必要な場所に免疫細胞を呼び集めたりします。また、呼び集められた免疫細胞が、サイトカインを使ってほかの免疫細胞や近くの細胞に命令を送り、増殖、分化、活性化、細胞死を起こすように働きかけます。サイトカインはネットワークを作ってお互いに協力しあったり(協調)、他のサイトカインの働きを邪魔したり(拮抗)、ひとつのサイトカインが様々な役割を担っていたり(多機能)、さらにはいくつかのサイトカインが似たような役割を担っている場合もあります(重複)。このように、サイトカインの作用は様々で非常に複雑です。ただ、この多様性・複雑な機能性が人の体内の免疫機能をスムーズに動かしてくれているのです。

サイトカインの主なはたらき(画像: 中外製薬”おしえてリウマチ”より)

サイトカインには、炎症性サイトカインと、抗炎症性サイトカインの二つがあり、免疫細胞を活性化させたり抑制させたりする働きがあります。この二つが免疫機能のバランスを保つ大事な役割を果たしていますが、これが崩れて炎症性サイトカインが過剰になってしまうと、自己免疫疾患や、「サイトカインストーム」と呼ばれる自分の細胞を傷つけてしまう現象が起きてしまうのです。

ビタミンⅮ には、この炎症性サイトカインを抑制して抗炎症性サイトカインを増やし、結果としてサイトカインストームを抑える働きがあることが研究でわかっています。

タイトジャンクションをコントロールする

タイトジャンクションとは、皮膚や腸管、血管、気管などに存在していて、細胞と細胞をしっかり結合させて隙間をなくし、水やイオンなどの大事な物質が漏れ出るのを防ぐと同時に、有害物質が管内に入り込むのを防ぐ役割を果たしています。タイルの目地のようなものですね。このタイトジャンクションが炎症などで緩んでしまうと、このバリア機能が壊されてしまい、体にとって有害な物質が入るべきでないところに入り込んでしまい、さらなる炎症を引き起こしてしまうのです。

ビタミンⅮ にはこのタイトジャンクションをコントロールして、バリア機能を高める働きがあります。腸内には多くの免疫細胞が存在しており、腸内のバリア機能を高めることで、免疫機能も高めることができます。


まとめ

以上見てきたように、ビタミンⅮ は免疫機能の活性化もしくは過剰な免疫細胞を抑制することで、さまざまな病気や感染症を防ぐのに非常に役立つことが研究でわかってきました。風邪やインフルエンザなどの感染症はもちろん、自己免疫疾患の改善、皮膚炎や一型糖尿病、骨粗しょう症などにも予防・改善も期待できます。

最近では、コロナウィルス感染症との関連も研究されており、サイトカインストームが起きることによって重症化してしまうケースでは、軽症・中等症のケースに比べて ビタミンⅮ の血中濃度が低いことがいくつかの論文で発表されていますが、ビタミンⅮ の用量や摂取期間などがまちまちで確実に結論づけるに至っていないため、これから更なる研究が求められています。

コメントを残す

*

CAPTCHA